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Little Bravery Э  4.5

4.5


 ちょっと隠れててよと新太に告げて、ライはホテルの壁を文字どおり駆け登る。
 苦笑する新太を尻目に五階建ての壁を登りきってみれば、庭の植木に阻まれて姿を確認できなくなってしまった。あのあけっぴろげな格好で一人っきりにするのはそれはそれでいろいろと危ないから、少しだけ心が急ぐ。
 壁を駆け登るわずか数秒・数ステップの間に、脇差からナイフを取り出し、逆手に構えた。市街地での弓矢の使用は、物理的にも法律的にも危険なのだ。
 燦々と輝く太陽のおかげで、絶好の物干し空間となっているホテルの屋上。
 弱く流れる風が、屋上の空間の大部分を占める洗濯済のシーツをたなびかせて、草原か海原のようになっている。
 一見、ただの平和な空間だ。
 そんな空間に漂う、殺気ではない、しかしながらどこかしら恐怖を感じる、重苦しくて冷たい何かがライの意識を尖らせる。強い力で、上から押しつけられるかのような。
「えー、お前は完全に包囲されているー。武器を捨てて速やかに投降しなさーい」
 虚勢をはった。
 すぐ近くにシロの気配を感じたから。
 彼女の能力の程は詳しくは知らないけれど、何よりも今このタイミングで、ここに彼女がいるという時点で信頼に値する。新太に毒かまして抱きついてキスするようなアブナイ人、というだけではない。
 シロの魔力は辿ってみれば既に屋上全体に張り巡らされており、いわばこのホテル屋上という場自体が彼女の空間と化していた。
 それでも消えない威圧感。相手の余裕の現れか、それとも。
「あっ」
 やがて登場したシロがライの顔を見るなり小さく声をあげる。シロ自身はライに気づいていなかったようだった。
 ライの顔を見て油断したのか、ほんの一瞬だけ、彼女の魔力が揺らいだのをライは感じ取った。
 場の空気が動いたのは、まさにその瞬間だった。
「しまった」
 あれだけ強く放たれていた威圧感が、一瞬にして、跡形もなく消え去ったのだ。
 白いシーツの海原は表情ひとつ変えていないのに、まるで違う場所に瞬間移動でやって来てしまったかのような違和感。
 やや遅れて反応したシロがおもむろに瞳を閉じて、それから残念そうに眉根を下げる。眉根下げるくらいでちっとも表情変わんねぇな、とかライがひっそり思ってみたら目を開けた彼女と目があってしまって、少し気まずい。
「気配追えた?相手は結構な手練れみたいでさぁおいらの方は無理だったから」
 しかしシロはこの問いかけに首を横に振るだけだった。
「そっか、あんがと」
 感謝の意は述べたが、内心では悔しさがこみ上げていた。
 油断したつもりも自惚れたつもりもなかったのに、結果的には一瞬で勝負が決まったといっても良いレベルだ。
 あの威圧感からして、自分が武術で対抗できていたかも怪しいことは想像できる。それくらいのプレッシャーだった。対峙出来なかったのは、実は良かったことなのかもしれない。
 幸い新太がいる茂みからは怪しげな気配は感じないし、もし何かあったら新太のことだ、情けない悲鳴でもあげるだろう。
 お風呂からあがった神父が心配するだろうから部屋に戻る、と告げてとっとと消えてしまったシロに向けてひらひら手を振ると自分も軽く息をついて、ライは屋上の端からひょいと飛び降りた。
 そういえば柵無いぞ大丈夫なのかこの屋上ヤバくねとか思いながら飛び降りたせいで気が散ったのか、地面に足をついた瞬間、バランスを崩してよろけて、片足を情けなくついてしまう。
 頭がぐわんぐわん音をたてた。
「うわっびっくりした!誰ですかもう」
 驚きの声がライの耳に入った。新太ではない、それよりも少し高めの。
 顔を上げると、少年が一人……ではなく二人、突然目の前に飛び降りてきた自分に対して訝しげな目を向けていた。一人は驚いた様子、もう一人はうろたえた様子で。ボサボサで整っていない、深い緑色の髪の毛の耳の毛羽立った、ガルルワオン族の子どもだ。双子だろうか、まるで同じ顔が二つ並んでいるみたいで不思議だ。驚いた顔を見せたほうは大きめの丸いメガネをかけている。
 うろたえているほうの少年が何か言いたげにしているように見えなくもなかったが、ライにしてみれば関係の無い話だった。
「あ~ゴメンゴメン驚かせちゃったね~ちょっと要り用でさー。ところで、この辺りに野郎が隠れてるの見なかった?口にするのも恥ずかしい肌色多めの姿格好した黒髪ツンツン頭の運動神経なさそうな、ちょうど君たちくらいの歳の子。あ、あと君になんか顔も似てるわ髪型とか。というか君新太にそっくりだわ」
「えっ何誰それ知らないです僕ら今ここ通りすがっただけですよ」
 メガネのほうが即答して首を振った。言われて周囲を見回してみれば、確かに新太の衣服はもう落ちてはいない。
 正味5分程度、そんなに長い間出払っていたという認識も無いのだけれど。
「そう?ならいいや、ありがと」
 二人に見送られ、ライはその場をあとにする。
「じゃあね~バイバーイ」
 メガネがにこやかに手を振った。

「あー疲れた、主に精神的に疲れた」
 ひととおりボヤいて、ライはシロから教えてもらっていたホテルの部屋に入るやいなや、着ていた服を乱暴に脱ぎ捨ててシャワールームに飛び込んだ。
 脇にある鏡に写っているのは、あいもかわらず美形であるぞと思ってやらなくもない自分の顔、
「……あれれぇ?」
 と思いきや、普段のいわゆる尖ったエルフ耳ではない、ガルルワオン族特有の少し毛羽立った耳を持って、金色ではなく緑色の髪をしている、一味も二味も違う風貌の自分。
「おー、おおおー?おーおー、あーーーなるほどなるほど」
 もうなんでもいいからお湯だけは浴びようとライは思って、蛇口をひねったら水が出てきた。



(たぶん次の章で区切りつけてあとはサザエさん時空になるかな?)
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