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Little Bravery Э  5.4

5.4



 ティラ国の首都リーデルベルクとはどんな街かと問われると、道ゆく旅人はまず、大賢者様、英雄様の住んでる街と答える。
 それから、魔法研究の中心地、シンメトリーの整然とした美しい街並み、世界最古の文明国家たる遺跡史跡の数々、魚料理が美味い、と続く。
 南半球中央に位置する島国ティラの外周を囲むドーナツ型の島の内側、ほぼ中央にある首都島(通称である)、その島の中央に構えた、防壁と堀に囲まれた街。ダーツの赤いところ別名何?という愛称もついている。
 そんな街の中央にそびえ立つのは国王の城、ではなく、王立の魔法研究所だ。
 その魔法研究所から東に少し歩いたところに、王立の図書館がある。
 地上二階、地下二階の建物は魔法研究所に比べると手狭だが、魔法の力で書籍が大量に圧縮保存されていて、蔵書の保管数は、建物何戸分にも相当する規模で、魔法研究所と同様に、国の重要文化・研究施設となっている。
 古代から存在していた建物を補強改築して現存させている歴史的建造物であるため、あの図書館には隠された地下迷宮に続いているだとか、亡霊が住み着いて呪いをかけるだとか、いかにもありがちな噂が流れては消え、流れては消えの歴史を積み重ねた、オカルト的には由緒正しき心霊スポット。
 そんな建物の地下二階の隅っこの、誰も興味も理解も無いような古代の、魔法研究所の研究員さえ頻繁には訪れない、解読はされたがそれっきりの資料の数々。
 そんな役に立つか立たないかわからないような資料を机の上いっぱいにうず高く積み上げ少年が一人、高低様々な唸り声をあげつつ、頭を抱えたり掻きむしったりしている。
 その横を、書籍を何冊か抱えた司書の少年が通りがかった。
「まぁ~たアルはそうやって読めもしない本とにらめっこしてる」
「読めてますよ」
「嘘こけ」
「読めてますってば……全部じゃないけど」
「一部じゃ意味無いでしょ、それ」
「そこは気合と推理でなんとか」
「いい加減ラボに訊けばいいのに」
「やだ」
「さいですか」
「いーからフェリスはほら、仕事に戻る!サボっちゃいけませんよ新米司書さん!」
「はいはい、わかりましたわかりましただからアルもたまには外の空気吸ってきなよ」
「こないだ吸ってきたばかりだから、しばらくはいい」
「へぇ」
 フェリスと呼ばれた司書は彼の態度にはもう慣れっこだから、それ以上追求はしない。しないけど、口にはする。
 まったく、反抗期なのか何なのか、なんでわざわざ非効率的なほうに走るのやら。
 司書の少年は彼に聞こえないようにつぶやいたが、とくに聞こえたところでどうということもない。
 あの一角の資料に魔法研究員が寄りつかないのは、既に大半が解読、翻訳済なのと、そこに記されている内容に、表向きには価値が無いからだ。
 異界送りの伝承、異界からの召喚、人体錬成、蘇生術。永遠の命、時渡り。
 特定の層にはこれ以上無いくらいの心ときめくワードが並んでいるものの、実際にできる・できないと、やる・やらない、やって良い・悪いは別だ。
「アルヴェール・ディオン様、アルヴェール・ディオン様、ご家族の方がお迎えです。至急応接室までお越しください」
 本の山にうずもれているアルヴェールは、館内放送を耳にすると、長く伸びた耳ごとたたんでしまおうかという勢いで、本を頭に押し付けて机に突っ伏した。大きくため息をついて、本も片付けず席を立つ。
 ほっといても人は来ないし、来てもフェリスが片付けるし。片付けないでいいよ、と言ってみたら、仕事だからねと言われて。それがなぜだかわけもなく腹立たしくて。それは多分彼がただしいことを言っているから。当たり前のことだから。
 書架の位置も確かめずに、全部の本を同じ場所に押し込めて、アルヴェールはその場を後にする。

 応接室の開いている扉の先にアルヴェールがやってきたのを視認するなり、大賢者グラン・ディオンは仰々しく立ち上がって、大げさに微笑んでみせたーーーように、アルヴェールには見えた。グランはアルヴェールより少し背が高くて、今年で42になるのに、強大な魔力が肉体に影響を与えているのか、年齢よりずっと若く見える。一時期は魔力顕示のために幼児姿で活動していたことがあったが、アルヴェールが大きくなるにつれて気恥ずかしくなってやめた。そもそもなぜ魔力顕示で幼児姿なのか、アルヴェールにはとんとわからなかった。
「やあ~愛しい我が息子よ、今日も元気に反抗期かい」
「ええ、そのとおりです。父さんこそ、用事も無いのにわざわざ迎えに来るなんて、マスコミ向けアピールか何かですか?」
 アルヴェールは露骨に嫌悪の表情を父親に向けてやると、嫌味ったらしく言う。
 そんな二人の間で、フェリスが大あくびを放っていた。昨日姉のフェリアに剣技の稽古に何時間も付き合わされたせいだ、あーだるい。
 アルヴェールとグランの視線が突き刺さるのを感じ取り、フェリスは光輝くような営業スマイルを返す。
「だって僕は別にあなたがたの子離れにも親離れにも興味無いし、関係ないですからね。お二人でなんとかしてください業務外ですー給料もらってもやんないですうー」

 「あっあのっ、大賢者グラン・ディオン様とそのお子さんですよねそうですよね、やぁ~驚いたなあ嬉しいなあ、サインもらえませんか握手してもらえませんか一緒に写真いいですか」
 図書館から出て数分と経たないうち、果物屋で母さん好きだからオレンジ買って帰る帰らないなどという言い争いをしていたら、話しかけられた。
 背後から興奮と緊張で裏返った男性の声がして、グランは振り向いてアルヴェールは振り向かなかった。
 振り向かずにいたら、笑顔とおだやかな口調で男性と話をする父親に、後ろから羽交い締めにされて、ヘッドロックで強制的に振り向かされた。
「すいませんねえこの子、デキる父親こと僕の存在がコンプレックスになっちゃってて」
 口答えしてやろうと口を開いたら、グランの魔法か、声が出ないどころか顔が微笑みの形で固定されてピクリともしない。
 それから二言三言グランと男性の会話が続いて、やっとのことで対面と顔面が解放されて、その頃にはアルヴェールはなんだかもう泣きたい気分になっていた。
「僕の息子として産まれてきたのを呪うのは勝手だけどね」
 ウキウキ去ってゆく男性ににっこり手を振りつつ、グランが言う。
「そういうのも利用するくらい強かなほうが、色々と人生上手く回るよ、もっとストレートに言うなら、僕を踏み台にしろ、ってえの?世界救った大賢者様の上を行くチョー賢者様的な?お父さんは息子が大きく強く育ってくれると嬉しいですだって父親だもん」
 それから、あっそうだ、とポンと手を叩いて。
「アルのこっそり大々的にやってる異界行きチャレンジの必要素材の箇所、あれ盛大に読み間違えてるから。なんか余計な液体ばかり採取しようとしてたみたいだけど。いやーさすがにそういうのは若さか学術肌の属性がないと言えないねぇーお父さんまだまだその気になれば子供作れるけどそこまでストレートにはね、ちょっとね。いいなあ思春期、また子供になって仕事しよっかなあ」
 アルヴェールの顔から火が出た。
 汗と涙と尿と唾液と血液と精液を三日間ブレンドして一気飲みするのではなかったらしい。
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