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Little Bravery Э  1.4

1.4


 森は深い。
 あれから三時間は歩いたが、いっこうに景色は変化しなかった。
 ライにとって自分は久しぶりの他人との遭遇だったらしく、なおかつその他人が世にも珍しい異世界の住人だったのだから、心がうわつくのもある程度は当然なんだろうな、と新太は思う。
 当然の成り行きとはいえ、頼んでもいないのに自己紹介をはじめられては、聞き手に徹する以外の選択肢は持ち得ない。が、
 「へぇ~」「ほぉ~」
などとうなずいてみせながらも、新太は驚いていた。聞く単語、聞く単語の大半が聞き馴れない、でも読み馴れた感のあるものばかりだったからだ。
 ライ・リオルフ。
 エルヴェン族という名称の人間らしい。人間という単語の持つ意味が地球とは別のようだ。半獣の姿を持つガルルワオン族(その単語だけで、犬か狼の何かなんだろうな、とイメージした)、変身能力をもつファーヴ族など、いろいろな種族をひとくくりにして、人間。
 異世界なのに日本語が通じるのが不自然で不気味だったが、多くの「そのテのファンタジー作品」がそうであるように、そういうものだ、ということなのだろう。今こうして二人で歩いている森だって、ざっと見てみれば自宅近くの雑木林とそれほど変わらない。そこに尖り耳のエルフ。
 エルヴェン族は森を住居として季節ごとのジプシー生活を送っているらしいが、ライはその集落からは脱してしまったそうだ。
 理由を問うてみると、一瞬だが露骨に目をそらして、「時代だからねェ」などと言われた。追求はしない。
 新太は見た目的に、ヒューム族という種族に近いらしい。地球で言うところの人間に一番近いようだ。
 種族の絶対数が人間全体の割合でもかなり多いのだとか。厳密には新太はヒューム族とは違うそうなのだが、何を指して「違う」のかは言われてもよくわからなかったし、理解しても意味はなさそうだった。

 話せば話すほど不思議だ。
 もしかしたら自分は、本当にファンタジー小説の中に入り込んでしまったのかもしれない。
 でも、触れた水は冷たいし、足をすべらせて転んだときに擦りむいた傷も痛い。
 リアルじゃないリアル。
 それはそれで、おもしろい。長くは付き合いたくないけど。学校あるし。
 とりあえずひととおり会話した限りでは、ライは彼自身が言ったとおり悪い奴ではないみたいだし、何より一人では魔物に襲われたらひとたまりもないし、運良く襲われなくても迷子身寄り無し帰還方法不明と、無い無い尽くしなのだ。する会話する会話のすべてが「らしい」という解釈にしかなってくれないのもまた不安を煽る。
 そこまで考えて、ふと「魔物」という単語が頭にひっかかった。見慣れた単語なので流しそうだった。
「あのマンイーターだっけ?ってのは魔物なんでしょ」
「うん、そうだけどそれが?」
「ってことは、魔物を統べる魔王とかいんの?どっかの場所に城とか構えて王女は戴いたーだのオマエ等の恐怖が極上のご馳走だーだのそういうノリで」
 訊いてみたら、あからさまに奇異なものを見るときの目つきで見られた。
 ちょっとムカついた。
 ライは悪びれる様子もない。
「異界の人だなー、って感じでオイラ超新鮮」
 魔物というものは、魔法のあるこの世界―――クラ・リオというらしい―――には当たり前に存在しているのだとか。精霊や魔力が滞留して生まれる、いわば生きた産廃。原理はわからない。
 文字通り生きているのだから、それをああも簡単に殺められるのか気になった。
 それに対する答えは単純明快。
「だって、死にたくないっしょ?」


 それからさらに二時間歩いて、太陽が落ち初めていよいよ森の中に暗黒が訪れんというタイミングで、唐突に景色が変わった。

01_04.jpg


 目の前に広がる大草原。それほど離れていないところに、集落らしき光の粒がちらほら見える。
 足が棒になったような疲れと痛みを感じていたのに、「魔物に襲われる」という脅し文句だけで長い長い道程をずっと我慢し続けていた新太は、不意に訪れた解放感に大きくため息をついて、とうとう地面にへたり込んでしまった。
「だあああああ疲れた腹減ったダルい辛いもう動けない~~!」
 もはや悲鳴に近い声でそうぼやくと、さすがのライも申し訳ないとでも思ったのか、新太の横に腰を下ろし、どこからともなく取り出したパンと錠剤のようなものを手渡す。
「昼の食べ残しと、長旅用の圧縮食料な。魔力の込められた具材で作られてるから、食い足りないかもしれんけど腹は膨れるし、疲れも取れる、って何だよその奇異なモノを見る目つき」
「……だって、どう見たってただの錠剤じゃん、それ」
 渡されたのは、ピンク色のひらべったい大粒2粒。テレビのCMで見た、生理痛の薬みたいだ。
「この期に及んでまだ猜疑的?うわーオイラ傷つくわーショックだわーこれはトラウマ確定だね。でぃーぶいだね」
「あーーーはいはい食べるから!僕が悪かったから!っていうかDVって」
「昔どっかで聞いた」
 でも用法が違う。
 ライだって昔を語れるほど生きていなさそうじゃんなどと思いつつ、錠剤を口に放り込んで、少し迷ったが、意を決してそのまま飲み込んだ。
「……」
「効果テキメンだろ。とっときなんだぜそれ。高いし」
 そう得意げに語るライを後目に、新太の表情はいっこうに晴れなかった。
「……あれ?」
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