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Little Bravery Э  2.1

2.1


 夕飯は野原を駆けていたウサギのような生物を狩って食べた。
 群生していた野草と木の実がオカズだ。名称は忘れた。
 骨をスープのダシにして、内蔵は干物にするのだとか。干す暇はなさそうなのだが、魔法の力を使えば一晩待つだけで良いらしい。
 新太は最初は当然「狩り」という現実味の無い行為に驚いたし、今さっきまでそこで元気に動いていた生物を食べてしまうことへの罪悪感に襲われたし、何食わぬ顔で動物を射るライの様子に恐怖さえした。
 食べることと狩ることに関しては幸い何日かで慣れた(食肉生産工場のビデオ映像を授業で観たのを思い出した)が、苦手な人はいつまでも駄目だろうなとは思った。それに、慣れたとはいっても、自分で動物を解体できるかというとやはり無理だ。生き物が苦手なクラスメイトの女の子の顔を思い出して、ちょっぴりせつなくなる。帰りたい。
 道具袋に食料が残ってはいても、できるところでは現地調達しないと、徒歩主体の長旅では、貯蓄などすぐに尽きてしまう。時間を短縮しようにも、レンタルの馬は高いし、乗り合いの車はもっと高いのだそうだ。
 車があるという事実が今のところ一番の驚きだ。口にしたら、そぉかぁ~チキューは進歩してんだなぁ~と皮肉を言われた。そんなつもりはなかったのに。
 ここ十日間の徒歩の旅路で、三度ほど車に追い抜かれた。自宅がある住宅街で見かけるような洒落たデザインのそれではなく、バスやワゴン車をもっと退化させた感じの、ドラム缶にタイヤがついただけという表現がもっとも適した、無骨にもほどがある不格好。
 そんなドラム缶の中に、いかにもセレブといった風体の紳士淑女が狭そうに、でも優雅に座っていて滑稽だ。
 徒歩は徒歩で、代わり映えのない美しい自然に囲まれた雄大な景色は、最初こそ新鮮だったが三日もすれば飽きてしまった。異世界だろうが絶景だろうがなんだろうが自然は自然。
 魔物が出たり狩りをする必要があるという今はまだ特異だと思っている事象だって、このままいれば自然になっていくのだろう。ライが時折見せる圧倒的な身体能力だけは、自分の日常として身についてはくれなさそうではあったが。魔法とか。ライが特殊なのか、自分が特殊なのかは新太にはまだわからない。

「うぉらぁーウルトラ上手に焼けましたぁー食うぞぉーって新太おまえ何ぼさっとしてんの」
 ライに脇腹を小突かれて、新太は思考から抜け出す。ライはあきれ顔だ。
「そんな感じでよく耽るっぽいけどさー時と場合選ぼうぜ。肉コゲる。老ける。美容に良くない」
「えー、そうかな?」
「そうだよ」
「……そう」
 そんなこと今まで一度も言われたことなかった。

 食事の前に、ライは右手を額に当て、短い黙祷を行った。ウサギ(のような生物)への敬意を払っているのか、神への感謝か、ただのポーズか。教会での態度を見るにライ自身は無神論者だろうが、それはそれこれはこれ、ということもある。訊いてどうこうなる話でもないので問いはしない。
 新太もつられて手を合わせ黙祷するが、何を思ってみれば良いのかわからない。
 ただ、いただきます、とだけは思った。耽ると老けると言われたばかりだし、深くは考えない。
 顔を上げるのに呼応するように、ぎゅるるるるる、とお腹がみっともなく音をたてた。
 じゃあ喰うべぇーと、我先にライが一番大きな肉を掴んで、口に放り込んだ。というより呑み込んだ。潔いまでの食いっぷり。
 新太も、二番目に大きな肉にかぶりつく。一日中歩いてばかりなのだ。腹が空かないわけがない。疲れすぎて食欲がなかったのは最初だけだ。
 食べてみればウサギ(のような生物)の肉も悪くはない。
 実際のウサギがどういう食感なのかは知らないが、とにかくこのウサギ(のような生物)は、筋っぽいのが気になるくらいで、味は普通だ。
 住めば都。文句を言っていられる立場ではないのだ。食えるだけでもアリガタヤ。
 旅暮らしなんて無縁だと思っていたのに、人生どうなるかわかんないなぁ、と新太は思ってみる。
 元の世界に帰ったら自慢したかったが、誰がこんな話を信じるだろうか。
「ごっそさん」
 ライが、おっさんみたいな言い方でそう言って、これまたおっさんみたいな大きなゲップを一発放って、あーごめん癖で、と視線をそらした。何度目だそれ、とは訊かない。


 今にも落ちてきそうな、満点の星空。
 動物や魔物を寄せ付けないようにたき火と結界を配備して、二人は眠りにつく。
 ライの道具袋には寝袋がひとつだけ。街で買い損ねた。
 二人で入って寝る?とか真顔で言われたので、新太は丁重にお断りすると、ライがじゃあいいやと寝袋を譲ってくれた。少し複雑な気分にはなったものの、だからといって、冷たく固い地面に直接寝そべることができるようには、まだ新太の身体はできていない。
 ライはもとから寝袋なんて持っていなかったかのように、普通にゴロ寝して普通にいびきをかく。
 次の街に寄ったら忘れずに寝袋を買おう。
 そう思って、眠りにつこうとした新太の意識を遮る一瞬があった。

 音が。






※ あー、ごめんなさいとしか言いようがありません
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