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Little Bravery Э  2.3

2.3



 目を疑った。
 新太にとってよく見覚えのあるあの女の子が今、自分の前に立ちはだかっているのだから。
 今は照り返したオレンジ色に彩られた、純白の長髪が映える、力を入れれば折れてしまいそうな華奢な肢体。ピンと背筋を伸ばし佇むその様子は夜空に輝く月のようで、神秘的ですらある……ように見えなくもない。
 この世界に来て初めて出会った女の子。
 あの小さな田舎の教会にいた、名前はそういえば訊いていなかった。
 真っ白なイメージ。可愛いというよりは綺麗。あと、神父の腰を踏んでた。いろいろ会話への反応が鈍かった気がする。
 なぜ彼女がこのような場所にいるのか。
 その女の子の左手が、先端に野球ボール大の青い球体があしらえてある、小振りの杖らしきものを、新太に向けている。
 教会にいたときに終始無表情だった彼女は今も無表情だ。
 木の根を操り、まんまと罠にかかった新太の姿を見て声をあげたのは間違いなく彼女だった。彼女以外の人影が見あたらないのが証拠だ。魔法使い、という単語が頭に浮かんだ。ライも魔法は使っていたけれど、あれとはなんだかちょっと違う印象。
 女の子は新太と目が合って驚いたのか、一瞬だけ目を見開いて、二、三度視線を泳がせたかと思うと、
「……うっかり……」
 ぼそりとそう言って、杖を振り上げ、その場で円形の陣を組んだ。
 球体が描く軌道に沿って青い光の筋が伸び、空中に文様を描いていく。唇が細やかに動いている。呪文の詠唱だろうか。
 球体の光が輝きを増すのに呼応するようにして、新太が何度も見たように、木々がさざめく。木の根が生き物のようにするすると新太の足を離れ、地面に潜っていった。
 トゲが刺さった痛みがまだ残ってはいたものの、絞めつけによる痛みは引いた。安心。
「……」
 女の子はぺこりと頭を下げると、笑っているんだか困っているんだかわからない渋い表情(というふうに新太には見えた)になって、杖を腰の後ろにしまいこんだ。
 新太は新太で、怒って良いんだか笑って許して良いんだか判断に困ってしまって、続く言葉が出てこない。
 木々の音が止んでしまえば、あとは静かな空間だ。
 炎の明かりに照らされた女の子と、再び目が合う。
 色のマジックなのか何なのか知らないが、女の子の潤んだ瞳がやたらと色っぽい。そういえば赤い色の光は科学的になんたらかんたらというのをテレビで見たことがある。
「あー、あーあー、ここここんなトコで会うなんて土偶、いや奇遇だね、あはは」
 言ってから、昭和のオヤジかよ!とセルフツッコミを入れる余裕もないのに気付いて焦った。
 黙って見つめるのが気恥ずかしいから何かしらの話題が欲しくて、かといって木の根っこをけしかけられたのを追求するのもどうだ。
 しかしそれにしたって表情の乏しい女の子だよな、とは感じた。感情表現が苦手なのだろうか。
「あの、あのネックレスさ、鳥が持ってっちゃった。取り返せなくてゴメン」
 なんで謝ってんだ。変なの。彼女のものだという確証もないのに。
 どうにもいろいろなことが突然すぎて、後から後から疑問ばかりがわいてくる。
「でもなんでこんなところに?あの神父さんは?というか、あの車に乗ってたの?」
 図らずも質問責めとなってしまうくらいに。ライにまた老けるとか言われそうだ。
 が、女の子は新太の問いには一つたりとも答えずに、
「……あっ……」
 という小声とともに、慌てたような態度を見せた。また視線が泳いで、顔が少しだけ上気する。
 今度は何だろう。
 新太は考えようとして、その直後訪れた強烈な目眩に意識を奪われた。
「……木……毒……たっぷり……」
 新太の耳に、途切れ途切れに入り込んでくる声。
 瞼が重くて、何か得体の知れないものに引っ張られるように、意識が沈んでいく。
 魔法は効かないんじゃなかったのか。
 あれえ?


 まぶしさに目がくらんで、やっと新太は自分が気絶していたのを理解した。
 風がそよいでいるし、汗もかいていたらしく背中がべっとりしていて気持ち悪い。生きている。
 視線を横にずらすと、あからさまに呆れかえった様子のライが、あーあー起きた起きた、これだから素人は困る、だとかつぶやいて肩をすくめていた。何の素人で何が困るのかは知らないが、想像はつく。
 身体を起こすと、頭と足首に痛みが走った。
 まだ意識がぼんやりしている。毒の影響かもしれなかった。
「で、あれに仕込んでた毒っていつ切れるんだっけ?」
 ライが女の子に問いかけている。
 女の子は指折り数えると、口を動かした。声は小さくて聞こえないが、ライがあっそ、という素振りを見せた限り、そう長くはなさそうだ。
「しっかしアレだな、魔法効かないって以外にウリは無いんかね?キミは」
 新太を見下ろしたライがぼやく。
 つまりは、あの毒は魔法で生み出されたものではなく、天然のものだったということだ。
 新太はなんだか自分が情けなくなって、かといって地団太を踏むこともできず、やれることといえば大きなため息をつくくらいだった。
 何やってるんだろ、自分。
 こっちの世界に来てから、何度そう思ったことか。
「……あ、あの……」
 新太の頭の上に影がおりて、小さな声が聞こえる。
「えっ」
 やっとのことで視線を動かすと、女の子がそこにいた。
 彼女から話しかけてくるとは意外だ、と素直に思う。
 女の子は、おどおどした様子でこう問いかけてきた。
「……名前……知りたい……」



(スピードアップが目標、でも急がばまわれ)
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