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Little Bravery Э  3.3

3.3


 ちょっと腹が立ったものだから「春が足りない」なんて勢いで言って、街に着いた途端フーゾク街に足早に向かっていったは良いものの、正直なところライはフーゾク街の空気というやつはあまり得意ではなかった。
 女の子とイチャイチャしたりするのは三度の飯レベルの好み、むしろ五度でもドンと来いであるところのライにしたって、それはそれ、これはこれである。
 ネオンライトは下品でうるさいし、胸焼けしそうな甘ったるい匂いを身にまとった、キラキラ装飾過多のお嬢さんたちと一緒にいるだけで、かなり疲れてしまう。
 そんなのに金かけるくらいなら自宅なり喫茶店なりで、終始無言で普通の格好をした綺麗なおねいさんの、顔なり胸なりフトモモなりうなじなりを見ているほうが、ずっと有意義だと思っている。触れればなお良し。
 旧友には「そういうのをムッツリスケベって言うんだよ」とか言われたので、「ピュアなおつきあいと言ってくれたまえ」と返したら喧嘩になって、それ以降会っていない。今思えば非常にくだらないことだが、まあそれも若さだよね、と笑って流している真っ最中だ。だからどうということもない。
 フーゾク街のところどころから入れる路地には、サングラスのいかつい男どもが支配する元締めが必ずあって、うっかりお店の人に掴まって痛い目を見たことが二度ほどあった。
 このサーズベルグの街も例外ではなく、やはりそのテの風貌の人がちらほら見え隠れしていた。
 つきあい方によっては、いわゆる裏情報を手に入れるのにこのうえなく有効だ。しかし、普通に生きていくためにはリスキーでしかない。
 必要がなければ近づかないのが賢い生き方なのだ―――
 と、思ったのもつかの間。
「おい、そこのエルヴェン」
 背後から声をかけられた。抑圧の効いた、凄みのある声。
「チッ……めんどくせ」
「何か言ったか?」
「あーいえ、なーんにも言ってませんよ。何ですか、店にゃ入ってませんよ。おいらァいたってクリーンでございますよ。ピュア~なエルヴェンの子供であります」
「嘘つけ、ムッツリスケベのくせに」
 ライの顔が凍った。
 そんなことを自分に言ってくる奴など一人しかいない。
 噂をすれば何とやら。神様というやつはときに鬱陶しいことをしてくれるものだなあと思う。
「リンガ……リンガ・フォンかよ?!しばらく見ないうちにすっかり老け声になっちまいやがって……っておいおい」
 さっき思い浮かべたばかりのなつかしの旧友の顔を見てやろうと思って振り向いて、ライは息を呑んだ。
 ライのそれより縦横二倍はありそうな大柄な体格に、角刈りサングラススーツと上から下まで黒ずくめな男が、ライを見下ろしていた。その様相はどこからどう見てもヤクザの下っ端、もしくはフーゾク店やディスコの入り口によくいるガードマンだ。一応ライが覚えているような昔の面影が残る顔ではあるものの、別人と言われればそれはそれで信じてしまいそうだ。
 サングラスのせいで細かくはわからなかったが、唇の端がつり上がっている。笑み。
「……オイラの覚えてるリンガちゃんは少なくとも、背の低いエルヴェンの姿をしていたが?」
 ライが呆気にとられて言う。
「何に関わってる?【ヒュームのガードマン】さん?」

 エルヴェンですらない黒ずくめの巨漢と化していたリンガに手を引かれて、ライは路地裏の奥まで連れていかれる。その様子は親子連れというよりはむしろ拉致・誘拐の類なのだが、あいにくフーゾク街ではさほど珍しい光景ではない。
 腰に潜めてある小刀に手を添えたら、
「お前こそ何に与してんだよ。最後に会ったの何年前だっけか」
 背中の向こうから声。少なくとも警戒心は無いか隠しているらしく、重みはあってもトゲは無い。
 だから、ライも小刀から手を離した。うかつに警戒しているような態度を見せれば、逆に事態を悪い方向に転がす可能性がある。
 無言がしばらく続く。先に口を開いた方が負けかのような空気があって、喉が乾く。
 裏路地の風景は、表通りの華やかさとは裏腹に薄暗く、湿っぽい空気が流れていた。
 隅に押し込めるように乱暴に捨てられている生ゴミ。酒の飲み残しと嘔吐物。事後の掃除に使った紙、煙草、香水、血痕、あとはたまに人間。生きているか死んでいるかは知らないし、知らなくて良いし、知りたくもない。少なくともライはルポライターでも正義の味方でもないから、興味は無い。
「……慣れてるだろ」
 図星を突かれた。
 さーて何のことですかね、と返してやったら、リンガは憮然とした様子でため息をついた。
 成り行きとはいえ、このままこいつについていって良いのかライは迷う。手を振り払って逃げるくらいのことは造作も無いのだし、選択肢はある。
 しかし、最終的には興味が勝った。
「ここだ。酒でも飲んでじっくりと、つもる話でもしようじゃないか」
「これから、つむつもりだろう?」
 たどり着いた扉の前で行われた、駆け引きのはじまりを告げるやりとり。
 ふと新太の顔が頭の中に浮かんできて、浮かんできた瞬間、背筋がぞくりとするような感触と、一陣の風が巻き起こった。
 若干不安になった。若干不安になっただけで、まぁシロか神父がどうにかするだろうと思って、それについては忘れることにした。




(九割がた書いたあとに全面的に書きなおしたので時間がかかってもうた。ぐぬぬ
「背の低い」を「ちっこい」と最初書いてたんですけどね、「ちっこい」って方言だったんですね
「押ささる」とか「うるかす」とか書かないようにしよう(笑))
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