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Little Bravery Э  3.4

3.4


 路地の角をふたつほど曲がって、階段を昇って降りて地下に潜る途中の壁に、ぱっと見ただけでは見落としてしまいそうなほど自然にカモフラージュされた石で作られた取っ手があって、リンガはそれを手にとって左右に回す。
 右に2回。
 左に5回。
 右に6回。
 ライはその挙動を見逃さない。
 ほとんど聞こえないような小さな機械音がして、その音にどこからともなく聞こえてくる、数羽のカラスの鳴き声が被った。壁の一部が開いて、人が一人カニ歩きで通れるくらいの隙間ができた。隠し扉。
「あのカラス、カモフラージュなんだが良い案だと思うか?逆にバレバレと思うか?俺的にはわりとナイスだと思うんだが。クサイとこにゃカラスが普通だし」
 なんだかよくわからないことを問われた。
 少なくとも自分にはバレたから、新案でも練っときゃいんじゃねと答えてやると、「まあ、そんときゃ頭でも吹き飛ばしゃいいだろ」なんてことを言われてしまったので、苦笑い以外の反応ができない。こんな過激なことを言う性格だったろうか。
 一応周囲を警戒しつつ、それでも大足でリンガは壁の中に入っていった。ライもそれに続く。
 2mはある分厚い石の壁を越えると、入り口らしい銀色の鉄の扉がある間に出た。あまりにも厳重で面倒くさいセキュリティだ。そうとうな秘密結社なのだろうか。油断ではないのだろうか。
 油でもさしているのか、鍵がはずれる音を除けば、驚くほど静かに、文字どおり音もたてずに扉が開く。内側から漏れる光は何を照らしているか。
 緊張感が一気に吹き出して、それでも警戒心は表に出さない。
「お前それ逆に不自然だからやめときー。旧友からのありがたーい助言。がはは」
 リンガに言われぞくりとする。
 反射的に腰に手を伸ばした手を制止することもないのが逆に不気味だ。余裕のあらわれなのかもしれなかった。
「お前がどう生きてどんな場所にいるかは興味無いと言っちゃ嘘になるけどよー」
「何が言いたい?」
「まぁとりあえず何だ、酒でもひっかけていけや」
「はァ?」
 完全にリンガのペースに飲まれてしまっている。
 重たい扉が完全に開いた頃には目も慣れて、部屋の内装が見てとれた。
 大きくてあまり柔らかそうとは言えないピンク色のソファと、それが囲む背の低い木製のテーブルには、食べかけのスナック菓子と飲みかけの缶ビール、ライには読めないどこかの地方の文字が記されているメモ帳らしきもの、同じく言葉が記された世界地図。壁の上のほうに小窓がひとつだけあって、太陽光が射し込んでいた。カーペットなどは敷かれておらず、無骨な石の床が剥き出しになっていて寒そうだ。その床は思った以上に整頓と掃除が行き届いていて、隅にゴミが散らばっていたりはしない。
 小窓の対面に本棚がふたつ。衣装箱、何が入っているかわからない戸棚。そしてやはり地図。こちらには何も書かれていない。
 奥に続く暗がりの先はおそらく、台所やトイレなどだろう。
 部屋を照らしているのは魔力灯でもランプでもなく、電力で動く蛍光灯だ。ライは心底驚いて、リンガにも聞こえるくらいのため息をついた。どれだけの組織なのだろう。想定外だった。
 何らかの組織のアジトというよりは、どちらかというと、一人暮らしのオシャレな学生の部屋のような雰囲気がする。意外。
 そして、そんな驚きのライに、リンガは言うのだった。
「ようこそ、我が家へ」
「え?」
「や、だから、自宅。マイホーム」
「どこが?」
「ここが。俺ンち」
「えっ?」
「えっ?」


 台所の奥から引っ張りだしてきた折りたたみ椅子に座るよう言われたから座ってみれば、さすがにちょっとだけ落ち着いてきた。
 差し出されたコーヒーに何か薬品か魔法が混入していないか不安になっていると、とくに不快な顔もされずに、細工はしていないと言われた。
 大きな椅子にどっかと腰を下ろした巨漢が、やっとサングラスを外す。
 やはり昔の面影は少しだけど残っていて、だからこそ元エルヴェン現ヒュームとなった人間に対し、ライは疑念を抱かずにはいられない。
「あのさーリン……」
 言いかけた言葉に、
「さァて、それでは予告どおり、つもる話でもしますかね?酒は切れてた。悪ィ」
 リンガが割り込んだ。先の発言からしておそらく意図的だろうと推測できたから、ライは憮然と息を吐くだけにとどめる。
 缶ビールを灰皿代わりにして、リンガが煙草をふかしはじめた。煙で輪を作って自慢げな顔をする。無視してやった。
 若干の間をおいて、リンガが口を開く。ライは唾を飲み込んだ。
「これからの俺の話は、本当のことと嘘のことがどっちも含まれてる。真贋は―――ま、お前自身が判断するこったな」
「ようは、お前もオイラを警戒してる、と」
「ストレートに言えばそうなるわな。でもまだ良いだろ、全部嘘ってわけじゃないんだから」
「あー、そーだな……オーケー、了解。それでは楽しいジョーホーコーカンの開始といきますか?」
 コーヒーを飲んで、二人は微笑を交わす。
 小窓の外をカラスが飛んでいくのをライは見た。



(うっわ前から二ヶ月近く経ってんじゃんどうなってんの。なんで二ヶ月経ってんだ)
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